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December 04, 2005

「欲望の翼」

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「欲望の翼」を見ました。1960年代の香港、片思いする若者達の話…だと私は思うのです。ストーリーに触れてますのでご注意を。

サッカー場で働くスー(マギー・チェン)はどこか崩れた感じの青年ヨディ(レスリー・チャン)に声をかけられる。最初は洟も引っ掛けなかったが、彼に「時計を見ろ、1分間だけでいい」と言われ、薄暗い部屋で一緒に1分間時計を見つめることに。すると彼は言うのだった「この1分を忘れない」。うっわー、キザです。思いっきりキザです。でもでもあの黒目がちの瞳で、かすれた声で、こう言われて心が揺れない女なんかいるんだろうか。ええ、次のシーンでは二人ベッドでいちゃついています。ヨディさん、仕事が早いです。

が、彼はそんないちゃいちゃの最中もどこか冷めている。「結婚はイヤ?」とスーが尋ねると「ああ」。傷ついて部屋を出て行く彼女に見向きもしないで鏡で髪を整えている。でも、そう答える彼もまた傷ついているように見えるのです。別の日、訪ねて来たスーに彼は言います「今はいいが、いずれ必ず俺が嫌いになる、不幸になるぞ」と。その言葉通り、彼の部屋には既に新しい恋人であるダンサーのミミ(カリーナ・ラウ)が待っているのでした。

レスリー様演じるヨディは悪いオトコです。でも、結局どの女にも本気になれない、ものすごーくモテるんだけど満たされてない感じがするのです。あ、光源氏だなと思いました。源氏の君は幼い頃死別した母親の面影を探し求めて女性遍歴を重ねますが、求めても求めても本当に欲しいものは手に入らない。ヨディも養母に育てられ、本当の母親を知らずに屈折してしまってます。「いずれ必ず俺が嫌いになる」と信じ込んでいて、だったら自分が本気になる前に相手を捨ててしまえ!と思ってるのかもしれない。幸せになろうと思って生きている感じが全くない。気まぐれに女性を口説き、ふらふらーっと風に乗って生きている。

そしてヨディは子供のようでもあります。本当の母親がフィリピンにいることを知って訪ねて行くが会えない、母の屋敷から去って行くときに背中に母らしい人の視線を感じるけれどもけっして振り向かない。「あちらが顔を見せないんだから俺も絶対見せない」。うーん、子供。そして母親にまた捨てられたと感じて自暴自棄になってチンピラと揉め事を起こして逃げる、そして死ぬ。とっても子供。名うてのプレイボーイでありながらも、子供の一面を持つ、どこか寂しげな美しい男。レスリー様以外の人が演じたらこの映画はどんなふうになるんだろう、「悪いオトコ」でなくて「イヤな奴」になってしまいそう。

スーもミミもヨディに片思いし、ヨディは母親に片思いしている、この映画は片思いの集合体のようです。でも特に切なくもなく悲しくもなく、華やかで軽やか。崩れた感じのヨディの着こなし、肩口まで見せたミミの女性らしいラインのドレス(小椋冬美の描く女の人のようで色っぽくてやわらかそうで好き)、きっちりしたブラウスとスカートのスー。いかにもその人らしいファッションがステキ。ストーリーはじめっとしているのに走る列車のラストはからっとしていて、なんだか不思議な映画でした。

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Comments

「君とは1分の友達、その事実は否定できない」なんて強烈な口説き文句、気の無い男に言われても絶対に記憶に残るセリフだわ。私この映画の後半寝たり起きたりでトニーさんの出る意味がよく判らなかったのよ~ 

Posted by: 0325 | December 05, 2005 at 21:27

記憶に残るよね。気のない男から「1分の友達」って言われたら嫌いになるくらいのインパクト。自分に自信がないと言えません。

トニーさんの出る意味、私もわかりませんでした。ずっと見てたんだけど前後に何のつながりもなくて唐突なんだよね。

Posted by: | December 06, 2005 at 20:53

これはレスリー以外、誰も出来ないですよね。
観ていて嫌味でなく、倒錯ぶりもまたうっとり。
あのチャチャを踊るシーン、カーリンと蹴りあう(変な蹴り方が好き)シーンなど、ストーリーとしてではなくワンシーンが非常に鮮明に残る映画です。

「欲望の翼」は実は後編を作成する話もあって、頓挫した過去があるので、トニーさんはあのような一瞬の使われ方なのですよ。私も最初観た時は??でしたが、いまは王家衛マジックにすっかりかかっているので(爆)「これもありだわ」とそんな結論に達してます。どんな続編だったのでしょう。

がー(^_^;)例によって長くなってしまった・・・。

Posted by: 東雲 | December 06, 2005 at 23:35

>倒錯ぶりもまたうっとり
ええ、鏡見て髪直すところとか見とれちゃいます。ラブシーンのがぶり寄り方(←下品ですみません…)もレスリー様以外の役者さんだとただがっついてるように見えそう。「チャチャ」の腰つき、うーんなんかなんかなんともいえませんが、好きです(笑)。

トニーさん、いきなり登場してすぐに映画が終わったのでびっくりしましたが、続編があるんだと聞いて納得しました。華仔さんが列車で逃げて、どういうふうにトニーさんとつながるのか、すごく見たかったです。

TBありがとうございました。私もさせて頂こうと思います。ずいぶん前に一度やったことがあるだけなんだけどできるかなあ。

Posted by: | December 07, 2005 at 21:18

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